今 週 の レ シ ピ

・ベーシッククラス(3月第2週)のメニューより

●波菜豆腐湯(ほうれん草と豆腐のスープ)    30kcal.  塩分1.1g

波菜豆腐湯(ほうれん草と豆腐のスープ) [材料]  -6人分-

・豆腐1/2丁(250g)
・ほうれん草1/3束(80g)
・日本葱(にほんねぎ)1/2本(30g)
・中華出汁(ちゅうかだし)4カップ
  ◎A
   塩小さじ1
   醤油小さじ2

[作り方]

  1. 豆腐は、1.5a角くらいに切る。
    ほうれん草は7〜8a長さに切る。
    日本葱は4〜5a長さの斜めに切る。
  2. 鍋に中華出汁を入れ、火にかけ、調味し、ほうれん草を加える。
  3. ほうれん草に火が通ったら、豆腐と葱を加え、仕上げる。
ポイントはここ
ちょっと一言
  • 「豆腐と葱」の組み合わせからは、味噌汁を連想すると思いますが、中国風の料理に汁物を組み合わせる場合、やはり中国風のスープのほうが味が合うのは当然。市販のスープの素(固形、粉末、ペーストなど)を使って、塩・醤油で味付けをしてみました。具は、組み合わせる料理の内容で工夫してください。

    ▽スープの具の組み合わせの例
      ・うずら卵 ― 日本葱 ― えんどう
      ・白菜 ― ハム ― 人参(にんじん)
      ・胡瓜(きゅうり) ― 筍(たけのこ) ― ハム
      ・鶏ささみ ― キノコ ― チンゲン菜

  • ほうれん草はアクがあるので、茹(ゆ)でて使うことがほとんどですが、すこしだけなら、そのアクもちょっとした味付けになります。毎日飲むわけでもありませんから、シュウ酸を気にすることもないと思います。
  • 豆腐は味噌汁の場合もそうですが、煮すぎはおいしくありません。中心まで熱くするだけで充分です。煮返したりせず、でき立てを食卓に出せるように、手順を工夫してください。
≪組み合わせメニュー≫
    ◎白菜のピーナツ和(あ)え
    ◎鶏の唐揚げ
    ◎ジャガイモとハムの炒め物
【野口料理学園】
塩 ひ と つ ま み

■カキではわからない 

先週は中国料理名を取り上げましたが、じつは足元の日本語の表記でも苦慮しています。材料や調味料の名前です。簡単にいうと、漢字、ひらがな、カタカナのどれを使うかということです。

たとえば、「にんじん」があります。これを「人参」とするか、または「ニンジン」にするか。なーんだ、そんなことかとお思いでしょう。わかってもらうのが目的ですから、にんじん、人参、ニンジンのどれだろうと構わないように思われます。問題があるとすれば、「人参」が読めるかどうかです。新聞、雑誌などであまり見かけなくなりましたから、とくに若い人にとってはむずかしいかもわかりません。

玉葱(たまねぎ)、胡麻(ごま)、海苔(のり)、片栗粉(かたくりこ)など頻繁に出てきますが、慣れてくると読めるようになります。椎茸(しいたけ)、筍(たけのこ)、胡瓜(きゅうり)、胡椒(こしょう)あたりまでは“なんとかなる”でしょう。でも牛蒡(ごぼう)、大蒜(にんにく)、茗荷(みょうが)、干瓢(かんぴょう)となると、どうですか…。なかなか読めないものでしょ。こちらも出すのがためらわれます。できれば常用漢字内で済ませたいのです。

タイトルの「カキ」を見てください。お気付きのように、これだとフルーツの柿と魚介の牡蠣の両方にとれます。以前、新聞に山梨産の柿を使ったデザート風のお菓子を、「カキの武田菱」の名前で載せました。このカキを、どうしても「柿」とはしてくれません。新聞用語のルールをたてに、柿は常用漢字外であり、果物名はカタカナ表示でなければならないというので、頑として譲りませんでした。「牡蠣」のほうは、見ての通りむずかしい字ですからカキとするのも止むを得ないとして、「柿」が許容されないのには納得がいきませんでした。

このように漢字のもつ機能のひとつは、日本語の特徴である同音異義の解消にあります。おなじ言葉を、アクセントやイントネーションで聞き分けますが、それでも微妙な場合があって、最終判定は漢字で決着します。そんな経験は日常茶飯事ですよね。

また、ひらがなやカタカタの「ずらずら書き」の中から、お目当てのものが漢字なら、たやすく"発見"できます。言うところの「視認性」が高いわけです。「醤油」を、「しょうゆ」や「ショウユ」と"読まなくても"、絵でも"見る"ように、漢字ごと一瞬に理解できます。漢字のもつ絶大な特性です。

レシピに目を通すうえで、この機能はたいへんに魅力的です。「塩」「砂糖」「酢」が、フラッシュのように目に飛び込んできます。いちいちこれを、「しお」だ「さとう」だ「す」だなどと読んでいたらまどろっこしい。まして、文章に"埋没"している中からそれらを拾うとなると、イラツキさえおぼえます。

座って読む分にはいいでしょう。でも、実践向きではありません。じっさいの調理の現場で、そんな余裕はないはずです。材料、分量が見てパッとわかるようでなければレシピ(テキスト)の用をなしません。漢字の視覚性を重視するのはそこです。お稽古の実習で、手元においてやってみると、そのアリガタミが一層よくわかります。テキストとは別に、大きく板書しているのも、それの一助です。

名詞だけに限りません。動詞もおなじです。「つける」は、「付ける」と「漬ける」の2字ていどを使い分けていますし、「茹(ゆ)でる」や「和(あ)える」も、ひらがなの中にその漢字があると、とても目について分かりやすいものです。いずれの場合も、最初に出たときに読み方をつけるようにしています(「付ける」「漬ける」はつけませんが)。2度目以降はそのままです。なるべく覚えてもらうために。

ただし、落とし穴があります。目につくからといって、漢字を多用しないこと。多くなれば、目立たないに決まっています。ほどほどの量に使用をとどめておかないと、逆効果になります。

そうした注意点をふまえても、やっかいな面にぶつかります。難字ではなく、読み方が特殊な場合です。4つあげましょう。出汁、天汁、灰汁、清汁。出汁は、「だし」。天汁は「てんつゆ」。灰汁は「あく」。清汁は「すましじる」。「てんつゆ」と「あく」はいいとして、「出汁」「清汁」の読みはほかにもあります。「だしじる」とするときや、「すまし」のときも。それぞれ習慣、主張があり、さらに好みも加わったりで一様ではありません。

このように、1枚のレシピの中には、ちょっとした"葛藤(格闘)"があるのです。漢字、ひらがな、カタカナをどう織り交ぜて読みやすく(見やすく)するか、つまりこの三つの記号を"どう料理するか"です。漢字のあつかいがポイントです。こんな観点から、レシピ作りに腐心しているわけです。


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