塩 ひ と つ ま み

この2月まで毎週土曜日に発行されていたフリーペーパー「かわせみ」にJICAの日系シニアボランティアとしての活動を通して感じた様々のことを、月に一度、12回書かせていただきました。「かわせみ」を発行していた「タウン企画」のご好意で、HP「家庭料理が一番!」の「塩ひとつまみ」に載せるご許可をいただきました。つたない文章ですが、良かったら、私のモジ・ダス・クルーゼスでの「食」を中心にした活動と同時に、ブラジルでの生活、日系社会とのかかわりについてお読みいただけたら、幸いです。

モジから「ボンジーア」

●3 これが日本料理? 人種の坩堝を実感  2018年3月3日掲載

「ブラジルで人気の『日本の料理』は何ですか?」日系社会の集まりで聞いてみました。
刺身、巻きずし、手巻き寿司、てんぷら、すき焼き、・・・そのあとが驚きでした。焼きそば、焼き餃子、ラーメン・・・最後に、「お煮しめ」との声に、ほっとしましたが・・・

《モジのある日本人会の忘年会》 それぞれの家族が一品「持ち寄り」
☆定番の「すし」

巻きずし いなりずし ちらしずし

☆こちらも必ず誰かが持ってくる

お煮しめ 春雨とワカメの酢の物

☆やはり、ブラジルでは「シェラスコ」は欠かせない

炭火焼 ソーセージと牛肉 その肉を野菜とマリネ

今や、サンパウロ市では、有名なブラジル料理の「シェラスコ」(塊の牛肉を剣に刺し、岩塩の味付けで、炭火で焼く)の店より、日本食の店の方が数が多いと言われています。
ここにあげた料理の中には、日本での調理法とはだいぶ違うものもあります。ところがそれがブラジルでは人気の料理になっているんです。

あんかけ焼きそば 「焼きそば」と聞けば、「ソース焼きそば」を連想しませんか?私もてっきりそうだと思っていました。違うんです。野菜たっぷりの「あんかけ焼きそば」なんです。そして、移住地ではそれが主役の祭りを行い、皆さんがそれぞれの味を追求しています。
40年ほど前、モジの隣町スザーノが発祥の地と言われ、そこの製麺所と日系の婦人会の努力で、ブラジル人にも人気の「焼きそば」が完成。ソース焼きそばはその場で一から作らなければならず、冷めてしまいやすく、その上、そのころはウスターソースはあまり一般的ではなかったとのこと。対する「あんかけ式」は、前もって具たっぷりの「あん」を作っておき、その場で温め、焼き目を付けた麺にかけるだけ。従って、お祭りの出し物として、すばやく客に提供できる利点から、広まっていき、熱いものが好みのブラジル人にも人気となったのです。
今や「YAKISOBA」としてレストランのメニューの一つとして掲げられています。一皿700〜800円、ミート皿に大盛で、大人の女性では食べきるのにはちょっと多い量です。

えび入りかき揚げ もっと驚いたのは、「天ぷら」。といっても「えび入りかき揚げ」。何もかもが驚きです。まず、大きい、直径20cmほど、値段は日本円で350〜400円。次にその具とその切り方。殻がついたままのエビとキャベツ、ピーマン、ニンジンなどの野菜をザクッと切ってあります。最後は衣とその揚げ方。屋台の横で見ていると、直径50cm以上ありそうなボールに小麦粉を水で練り、そこに具を入れます。その生地を、直径20cm以上の手のついた型に広げます。揚げ油は2つ用意。まず、一つ目の油で、たぶんエビに火をとおし、形が整うまで揚げ、油から出しておきます。注文を受けると、もう一つの油で,熱く揚げます。
一口食べて、「しょっぱい」。これが最後の驚き。ブラジル人は天ぷらはスナック感覚で食べていると見受けます。天つゆも大根おろしもいりません。それだけで完結なのです。
まだまだ不思議な「日本の料理」。両面を焼いてある「焼き餃子」。衣をつけて揚げてある「巻きずし」。食べ方も、「刺身」はワサビたっぷり、しょうゆどっぷり。「音を立てて食べてはいけない」マナーからでしょうか、「ラーメン」の?をフォークに巻いて、まさに、スパゲッティ・・・

ブラジルに1年8カ月、暮らしてみて、「この国の料理とは?」と考えると、食材、味わい、盛り付け、レストランの供し方など、多種多様。一番の理由は、ブラジルは移民の国。人種の坩堝といわれることを思えば、食も同様、「日本の料理」がその形、味わいはどうあれ、ブラジルの中に浸透していることに心から拍手を送りたいこの頃です。

<このページ最上段>
<これまでの塩ひとつまみ>
【野口料理学園】

§【ご意見、ご感想をお寄せください。ご質問もどうぞ。】  ichiban@kateiryouri.com


ホーム 月別 ジャンル別 これまでのお菓子 これまでのジュニア 学園案内 ケーキ屋さん