今 週 の レ シ ピ

・アドバンスクラス(7月第2週)のメニューより

●鶏(とり)ささみの刺身    75kcal.  塩分0.4g(付け醤油は含まず)

鶏(とり)ささみの刺身 [材料]  -6人分-

・鶏(とり)ささみ250g
  ◎A
    塩小さじ1/2
    酒大さじ2
・片栗粉(かたくりこ)大さじ5
◎薬味
  キュウリ1本
  しその葉10枚
  ミョウガ3個
・おろし生姜(しょうが)少々

[作り方]

  1. 鶏ささみは筋(すじ)をとり、観音開きにし、薄くそぎ切りにして、塩と酒で下味をつける。
  2. 5分くらいたったら片栗粉をまぶし、熱湯をくぐらせ、冷水にとる。熱がとれたら、水気を切る。
  3. キュウリ、しその葉はせん切り、ミョウガは斜めの薄切りにし、それぞれ冷水に入れた後、水気を切る。
  4. 氷を皿にしき、鶏のささみを盛り付け、薬味をたっぷり添える。
ポイントはここ
ちょっと一言
  • 最近は、「筋なしささみ」と書かれて売られていることが多いのですが、筋の一番かたいところがとってあるだけのような気がします。中に入っている部分をとると、たしかにささみの形がくずれて二つに割れてしまい、商品として売りにくいので、筋を全部とってないのかもしれません。「筋なし」でもよく調べて、残っている筋はきちんととってください。
  • 鶏肉のなかで「ささみ」は、生でも食べられる部位です。熱湯をくぐらせて、まわりがうっすら白くなったら、手早く冷水にとります。中は、すこしピンク色がおいしい状態です。
≪組み合わせメニュー≫
    ◎かきたま汁
    ◎野菜の精進揚げ
    ◎ツナとエノキのおろし和(あ)え
【野口料理学園】
塩 ひ と つ ま み

■不揃いな野菜たち

新婚のAさんが、1ヶ月ほどしてお稽古にもどってきました。その第一声が、「先生、どうしよう。野菜がうまく切れない」。いったい、どうしたのでしょう。

Aさん夫婦は甲府の隣町に新居を構えました。ご主人の実家がすぐ近くです。お姑さんが、自家製の野菜を若夫婦にも食べてもらおうと、せっせと運んできます。いわゆる農家ではありませんが、畑があって、食べるものはなんでも作ってしまう。それはいいのですが、Aさんが今まで見たこともないような不揃いな野菜ばかりなのです。形はまちまちだし、色も大きさもちがう、まっすぐなものがない。びっくりしました。

Aさんはごくごくふつうのサラリーマンの家庭で育ちました。結婚によって、「都会」から「田舎」へと移りました。人口20万といえども甲府は県下最大、県庁所在地でもアリマスから、リッパな「都会」です。彼女が知っている野菜といえば、スーパーにある色も形も大きさも一様にそろった規格品です。ところが田舎でお姑さんからもらうのはこれとは反対に、形も大きさもバラバラで、ひとつひとつがみんなちがいます。まっすぐなものは、むしろめずらしい。凹んだりつぶれたりがふつうです。言ってみれば、売り物にならないハネダシばかりです。

こんな曲がったキュウリじゃ皮むきがあてられない、板ずりもできない。凹んだピーマンはどこを切るの? どうやったら切れるの? せん切りなんて到底無理。ナスだって、太いのもあれば長くて大きいの、丸くて小さいのと一つとしておなじものがない。タマネギも、いびつだったり色が変わってたり、すでに土の中で痛んでいたりする場合があります。「都会」育ちのAさんはお手上げ状態です。ただ、味だけはおどろくほどおいしいのです。

彼女が嘆くのも分かります。町で売っているものは、八百屋さんであれスーパーであれ、測ったように色も形もそろっています。お稽古で習った通りに切ればいいのです。でも、田舎でもらう野菜はどれもこれも"個性的"なものばかり。すんなりと「公式」が当てはまりません。いわば応用問題です。

私は答えました。「大丈夫、すぐ慣れます。基礎をしっかり覚えておけば、なんでもないの」
そうです。戸惑いも、やっていくうちに自然消滅します。基礎が身についていけば、応用問題もなんなく解けるようになります。時間の問題、慣れの問題です。

それよりも私は、別の側面から彼女の"悩み"をとらえていました。生徒さんの中には、Aさんのように郊外に住んで畑をもっている人や、家が専業農家、あるいは「都会」に住んでいて、とれ立ての野菜をよくもらう人などが少なくありません。現に私も生徒さんから、「ハネダシで申し訳ありませんが」がとこの季節なら、ナスやキュウリをよく頂戴します。食べきれない時は、ご近所やほかの生徒さんにあげますが、それでも余ってしまうことがあります。

そうしたときでも、私はそれを食材に使うことはありません。お稽古には、形や大きさがそろった方が教えやすいこともありますが、それよりは、いただき物を使うのは生徒さんに対して失礼だと思っていました。「しっかり材料費を取っているのに、なんでしょう」とか、「なにもわざわざ曲がったキュウリを使わなくても」と嫌な思いを抱く方がいるかもしれません。

でも、Aさんのことで、すこし考えを変えました。生徒さんは彼女のように、ときどきは応用問題を望んでいるのではないかと。不揃いな野菜のすばらしさを彼女たちは知っているのです。低農薬・無農薬で安全なこと、新鮮で飛びっきりというくらいおいしいことを。そして店頭にならんだ野菜が、色も形も大きさもそろいすぎて、じつはふつうではないのではないか、つまり不揃いであるほうがより"自然"に近いのではないだろうかということ、をです。

これからは、いただき物があったらお稽古に登場させようと思います。不揃いな野菜であっても、調理して食べる分にはまったく支障はありません。「商品」としては規格外や不合格かもしれませんが、だからといってそのまま捨てることはしないで無駄なく使ってあげる。ものを大切にする気持ちが伝われば、いいえ、伝えなければならないと思っています。


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