塩 ひ と つ ま み

この2月まで毎週土曜日に発行されていたフリーペーパー「かわせみ」にJICAの日系シニアボランティアとしての活動を通して感じた様々のことを、月に一度、12回書かせていただきました。「かわせみ」を発行していた「タウン企画」のご好意で、HP「家庭料理が一番!」の「塩ひとつまみ」に載せるご許可をいただきました。つたない文章ですが、良かったら、私のモジ・ダス・クルーゼスでの「食」を中心にした活動と同時に、ブラジルでの生活、日系社会とのかかわりについてお読みいただけたら、幸いです。

モジから「ボンジーア」

●1 驚きの日本食材コーナー  2017年12月9日掲載

お久しぶりです。「かわせみ」で昨年の6月まで、「世界を巡る味の旅」の連載をしていました野口料理学園の野口純子です。私は今、国際協力機構(JICA)の日系社会シニアボランティアとしてブラジルのサンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市に住み、世界遺産となって注目を集めています「和食」の普及を通して、日本の食文化を広める活動をしています。 任期は2016年7月から2018年6月までの2年。最初の2カ月は材料、調味料を購入し、実際に調理して日本との違いを確認。3か月目からは市の中心部と郊外の婦人部をまわって、現地の食材を使い、日本の家庭料理の講習会を開いています。ほぼ日本と同じ食材、特にこの地域は野菜が種類も量も豊富で、有意義な講習ができ、もう1年5カ月がたってしまいました。残り7カ月、今まで以上に充実した活動をしたいと思っています。

33年前、サンパウロで移民の研究をしている学生時代の友人から「お正月料理を作りに来ない?食材は何でもある!」と誘われ、暮れから2週間、初めての一人旅。思い描いていたのとあまりに違うブラジル、特に「食」には驚きの連続。食材の豊かさ、特に野菜、フルーツの種類と量の多さ、さらにそのころ日本で失なわれつつあった子供のころの懐かしい「和食」が残っていると感じました。この食材を使って、ブラジルならではの「和食」を作ってみたい・・・あの時の思いがやっと叶いました。

縁あって、今回で6回目のブラジル、といっても5回は旅行。初めて住んでみて当然、新しい経験の連続です。30年前はスーパーは本当に珍しく、野菜やフルーツは曜日によって通りに出る「フェイラ」(青空市場)で、肉、魚は専門店で購入していました。8年前の5回目は、スーパーの売り場の広さに、さらに今回は「日本食材コーナー」に驚きです。

ここ、モジ・ダス・クルーゼス市は日系人が多く、日本食材の専門店もあり、ブラジル製の醤油、酒、みりん、酢、味噌などの調味料、豆腐、納豆、こんにゃく、ちくわ…などが売られています。さらに、ゴボウ、大根、里芋、白菜、もやし、ショウガ、ニラ、キノコ類などが、季節によって、タケノコ、レンコン、梅、ラッキョウ、栗、ホウレンソウ、シソなども並びます。

【日本食材店】これで一軒、肉と魚以外はほとんどありました。

「フェイラ」は今も盛んで、日系人の店も多く、日本語で買い物ができます。ポテト、ニンジン、タマネギ、キャベツ、レタス、キュウリ、ナス、トマト…日本の八百屋さんに並んでいるものはほとんどあります。店にはほとんど出ませんが、講習に使いたいとお話しすると、三つ葉、茗荷、木の芽、ユズなどがちゃんと届きます。したがって、今までの講習会で、実習できなかった「和食」は一つもありません。肉、魚、乳製品も種類、量ともに豊富で、「和食」を広めるには最適の食材環境です。

【フェイラ】住んでいたアパートの近くのフェイラ、毎週土曜日午前中に開催。

その上、日系の皆さんが「和食」に対してとても興味をお持ちで、料理講習会には思っていた以上の参加者。このボランティア活動に本当にやりがいを感じ、充実した毎日を送っています。

【講習会の様子】モジ各地の婦人部で講習

〈かわせみから〉
  野口さんがブラジルでの食や暮らしなどをつづります。月1回掲載します(「ボンジーヤ」はポルトガル語で「おはよう」の意味)。

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<これまでの塩ひとつまみ>
【野口料理学園】

§【ご意見、ご感想をお寄せください。ご質問もどうぞ。】  ichiban@kateiryouri.com


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