塩 ひ と つ ま み

■プラス、それともマイナス?

物事の価値判断というのは人それぞれ、見る角度や立場によって異なるのは当たり前のことです。ここではオンラインレッスンを取り上げます。近頃ますます盛んになって、当学園でも、JICA(国際協力機構)を通じて何度かブラジルを中心にアルゼンチン、チリ、ペルー、ボリビア、キューバなどの参加者と行なってきました。

オンライン最大の利点は、移動する必要がないことです。どんなところでも居ながらにしてレッスンを受けられます。このゼロ距離を価値あるものとして、付随する移動時間と移動料金を上乗せ、通常より高いレッスン料の設定が可能です。

レッスン、この場合は教え習う双方向のことを言います。教える側が一方的に行なう単方向ではなく、教える側と習う側が随時交流(YouTubeでは不可)しながら進行します。準備するものがそれほど多くない、たとえば語学やスポーツとちがって、料理のレッスンにはテキストの他、食材や道具が付いて回ります。通常の対面レッスンと比べてみましょう。

教室では、レシピにしたがって食材や調味料のほか、鍋、包丁、まな板の道具類や茶わん、箸(はし)、皿などの食器類を人数分そろえます。なによりまず食材と調味料の買い出しから始まります。参加人数が多いとたいへんです。1軒のスーパーで済まない時も出てきます。それに、仕込みやセッティングを加えると、かかる時間や労力(金額も)はバカになりません。

これがオンラインだと、いくら人数が増えようと常に師範(講師)一人分で済むので、大助かりです(多人数の場合、参加者の実習はなしで作り方だけを見せる単方向)。

ただし、これらの恩恵は参加者からみれば負担です。教室に行けば揃っているはずのものを自分で用意しなければならないからです。材料の買い出しから、道具類、食器類の準備はすべて自前、自己責任です。
これらのことから、教える側としては、オンラインのレッスン料の設定は対面と比較して、事前準備の大幅軽減から、低く見積もっても差し支えないことになります。

ところが・・・。元助手さんの友人は異議を唱えました。
「おかしいですよ、先生。料金設定は高くなければ」
「なぜって、それは距離。ゼロなんだから移動するのにかかる時間とお金は上乗せするべきでしょ」
「そうね。一理あるわ」
もう一人の友人も同調します。
「考えてもみてよ。県外どころか、北海道や沖縄、どんな遠方からだって来る必要がなくて受けられるのよ。まして海外だったらもっとよ。途方もない距離を飛び越えるんだから、高くて当然よ」
確かにそれはそうだけど・・・。私は言葉に詰まります。

争点は「距離」のようです。移動不要を価値あるプラス要因として捉えるかどうかです。現実として、距離を取っ払ってくれるオンラインに勝る遠距離レッスンはないでしょう。その点では大いに利用すべきです。

とは言うものの、私にとって重要なポイントがあります。
オンラインでは、「手取り足取り」はできません。直(じか)の接触が不可能で物足りないのです。画面では感じることのできない「息づかい」、野菜や肉などの食材が発する「生の感触」、これらを大切に思う者にとって、現実味を欠いた展開は仮想空間に漂っているようで、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになります。私の中でのオンラインレッスンの価値判断は、対面レッスンと比べ、マイナスへと導かれてしまうのです。

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【野口料理学園】

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