| 塩 ひ と つ ま み |
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■大食い・早食い競争●近所のワンちゃん、トイプードルですが、ときどき散歩の途中に寄ってくれます。私の顔を見たくてくるわけではありません。頭を撫でてくれるからでもありません。ひとえに、おやつが欲しいからです(くいしんぼうったら、ありゃしない)。犬好きの私が、散歩中の飼い主さんに頼んで家に寄ってもらったことがきっかけでした。御礼に自家製のパンの一片をあげたところ、その喜びようはまさに狂喜乱舞。見ているコチラまで心が躍りました。以来、三日に上げずにやってきます。
いつもパンひとかけらかビスケット1個ですが、あまりの喜びようについつい複数個あげようとしますが、健康を心配する飼い主さんからストップがかかります。犬は自制がききません。あげるそばから、なんぼでも口にします。私も自制が必要です。ワンちゃんの喜ぶ姿が見たいからとキリなくやろうとします。食べる方もあげる方も、ほどほどが肝要なのです。
おいしい食べ物をお腹いっぱい食べたいと思うのは、動物の本能です。ヒトも変わりません。
子供のころです。学校から帰って玄関を入るなり、「ただいま!」ではなく「お腹空いた!」が帰宅のあいさつでした。いくら食べてもお腹を空かしていました。「腹も身の内だぞ」と、よく祖父からたしなめられた記憶があります。●満腹で満足する動物とちがい、そこで止まらないのがヒト。なまじ知恵があるだけに、その先に快楽や娯楽を求めます。量とスピードの競い合いです。
「競争」で得るものは何でしょう。他者より優れている証明、賞金賞品の富、順位による地位と名誉、いずれも人間の基本的な欲望です。これを見世物化したのがさまざまな競技大会です。大食い競争に限りません。身体の部位によって種目が分かれ、飛びぬけた選手が勝つことによって栄誉を受けます。大食いなら、その勝者はさしずめ胃や腸が並外れて強靭なのだと思います。大食い競争はこの点で、本能に根差した自然発生的に生まれたイベントと言えなくもないでしょう。●しかし、そこまで譲っても大食い競争には賛成できません。テレビ画面などで、食べ物を少しでも多く、早く、限界を超えつつ苦痛を浮かべてまで無理矢理口の中に押し込んでいる姿は見るに堪えません。浅ましさが露骨すぎて、悲しくなります。不健全不健康で、食べ物に対する粗雑な扱いは、食材の生産者と料理人を冒涜する以外の何物でもありません。
世界中まともに食事を摂れない人々がどれだけいるか。自然災害や戦争による人的被害、経済不況下の困窮などで食糧危機にあえぐ人々は7億5千万以上にものぼると言います。それを思うと、必要以上に食べたり、余ったものを捨てたり、粗末に扱うことなどできません。私には大食い・早食い競争の暴食は、不快で低俗な趣向としか映りません。
最近、テレビの大食い番組は減っているようです。食品ロス、摂食障害を助長しかねないなどの批判が相次ぎ、自粛気味とのことです。中国でも2020年、大食い・食べ残しの禁止令が出されました。美食の大国においても、食べ物を粗末にしてはならないという戒めが法令化されたのです。食育インストラクターでもある私としても、子供たちの食育面から見て大いに歓迎すべき事例です。
●料理はじっくり味わって食べてほしい。といって、気取ることはありません。改まる必要もなく、かしこまる必要もありません。むしゃぶりつこうと、ガツガツ食べようとかまわない。そこにちょっぴり笑顔と感謝の気持ちが垣間見えたら、それだけで作り手は充足感にしびれ、次にまた作ろうというモチベーションが湧いてくるのです。
【野口料理学園】
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