| 塩 ひ と つ ま み |
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■馬並み●定説が覆(くつがえ)ることって、あるんですね。
熊は冬眠する。熊というのは、冬になって寒くなると森のどこかで春まで眠るものだと思っていました。そうではなかったのです。報道によると、昨冬、雪の降り積もった東北地方のある県で、暖房の利いた住宅の一室に熊が侵入、食べ物を漁っていたとありました。
温暖化の影響で、寒さが緩んだからでしょうか。それもあるでしょうが、餌があれば寒さは凌(しの)げると熊が学習した、つまり、寒くて動けないのではなく、寒さで食べる物がないから動けない、じっとしている、眠るしかなかったということのようです。餌があれば寒さもヘッチャラなんですね。だから定説が覆ったのではなく、「熊は冬眠する」はもともと定説ではなく、単なる思い込みだったということになります。人間も学習しました!●熊とか猪は人間に危害を加える心配があるので常に監視の対象ですが、鹿はその危険度が低いこともあって関心が薄れがちです。しかし、山中の植物を食い荒らして洪水や土砂崩れの誘因となり、農作物を台無しにし、鉄道・道路の衝突事故をもたらすなど害獣と目されています。そのうちの食害がかなり深刻であることを、このあいだのモーニングショーで知りました。
鹿は北海道を除いて全国で200万頭以上いるらしい。適正個体数というものがあって、その数は地域によって異なり、主に捕獲によってコントロールされている。それは私のような門外漢にも理解できます。●私のいる山梨県にはおよそ47,000頭の鹿が生息(令和4年調べ)しているようです。適正頭数が4,700頭だそうですから10倍の数です。年間16,000頭ほどを捕獲しているそうですが、とても追いつきません。しかも捕獲したほとんどが廃棄処分(焼却・埋設)されるのだとか。山梨には鹿皮を材料とした「甲州印伝」という伝統工芸品があるものの、有効活用は食用を含めて10%程度にとどまるといいます。
なんと勿体ない。料理に携わる者として、鹿肉の食材利用が真っ先に頭に浮かびます。ジビエのひとつして熊や猪、馬などと同様に利用するのです。野生なので牛・豚・鶏のように畜産業としての安定供給は難しいでしょう。肉食文化のヨーロッパなら伝統的に鹿肉料理も多彩で一定の需要があるでしょうが、日本はまだまだ季節限定、地域限定として一部愛好家のマイナー料理です。
●鹿肉料理が普及するには、肉が手軽に消費者の手に入ることが最低条件です。しかも安価に。地方によっては、鹿肉が比較的簡単に手に入ってレストランのほか一般家庭でも楽しんでいるところもあると聞きます。山梨県だって困るくらい鹿がいるのですから、実現できそうな気がします。
それには人手が足りません。そもそも県内に専業の猟師さんがいるんでしょうか。頼みの綱の猟友会は、高齢化などでどこもメンバーが減って後継者不足です。また捕らえた鹿を精肉にするある程度の規模の加工工場も必要です。このご時世、従業員(処理の専門家を含めて)を集めるのは大変でしょう。ほかにも課題がありそうです。そんなこんなで流通システムを立ち上げ、鹿肉を肉屋さんやスーパーの店頭で販売するまでになるには相当の困難が伴いそうです。牛・豚・鶏のレベルは到底無理として、せめて桜肉として認知度のある馬並みになってくれたらと期待するところです。若かりし頃、一度、鹿肉をワインで煮込んだ料理を出されたことがありました。悪くない味だったと記憶しています。そんな実体験から、要望があればですが、鹿の食害解決の一助に、鹿肉を食材とした家庭料理のメニューを私なりに考えてみたいと思ったことでした。
【野口料理学園】
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