| 塩 ひ と つ ま み |
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■女人禁制●この日曜日から大相撲夏場所が始まります。好きで、よくテレビで観戦します。贔屓(ひいき)のお相撲さんがいて一喜一憂します。取り組みもそうですが、升席のお客さんの様子も目に入ります。女性客も少なくありません。ところが、女性は土俵に上がれないのですよね。女人禁制(にょにんきんせい)。女性ファンがワンサといるご時世に、こんな決まり事がまかり通っているとは驚き、いえ奇跡と言っていいでしょう。
神聖な場所や空間や集りに不浄な女人は立ち入ることができない。生理や出産で女性に血はつきものです。それが穢いとか汚らわしいとされて、日本では長い間、神事神域から遠ざけられてきました。幾つかの神社仏閣、山岳のほか各地のお祭りや行事、はてはトンネル工事、酒蔵などに及んでいます。
禁制とまではいかなくても、女性には向かないとされた職業がありました。若い人ならきっと首をかしげるか失笑するでしょう。前述の酒蔵の杜氏やトンネル工事の作業員のほか、バスやトラックやタクシー、トラクターなどの運転手、電車の運転士などの肉体労働。それだけではありません。パイロット、設計士、土木技師、警察官や検事、判事、宮司、牧師、神父、科学者、それに私がなりたかった南極の越冬隊員etc. いろいろありすぎて困ってしまうほど。いかに多かったかです。女性の社会進出が極めて限られていた時代でした(戦争が終わって女性解放・男女平等が叫ばれましたが、1950年代~60年代頃は戦前の風潮がまだ色濃く残っていました)。そのひとつに寿司職人があります。
●前園長だった母から聞かされていました。女は寿司職人に向いていないと。なので、握り寿司は教えてもらえませんでした。“女は手が温かいから、足の速い寿司ネタを扱うには向いていないのよ。その代わり、漬物を漬けるには向いている”、つまり、ぬかみそを扱うには温かい女の手が都合がいいというわけです。何の疑問も反発心も湧きませんでした。なるほど、と思ったくらいです。
それでも、奇妙に思うことがありました。コックさんや板前さんはほとんど男性で、女性は見当たりません。家庭では例外なく女性が料理するのに、なぜかしら?
答えはおそらくこうです。おなじ「料理をする」のにも、仕事として、つまり職業としてする場合とそうでない場合の違いです。分かりやすく言えば、社会というのは男優先で、女は社会に出ようなどと考えてはいけない。男は外で仕事をし、女は内にいて家を守れというわけでしょう。女性の社会進出が厳に戒められていた男社会の時代でした。「職業婦人」が珍しかったのです。 やがて高度経済成長期を経て、こうした女性差別のタブーはかなり解消されてきました。でも相撲の土俵のようにいまだに女人禁制の領域があります。
●それにつけても不思議です。国連に女性差別撤廃委員会という組織があります。過日、皇位継承に女性天皇をと主張して話題となったあの委員会です。日本の国民的スポーツである大相撲の土俵に女性が上がるのを禁じているのはおかしいとクレームがきて当然ですが、今のところ音沙汰なしのようです。
それに、国内にある女性蔑視・女性差別を批判する人権団体が、同じように黙認しているのはどうしてでしょう。いまの時代、ひとたび号令をかければ、多くの女性の相撲ファンがボイコットに賛同し、たちまちにして時代錯誤のタブーは吹っ飛びそうに思えるのですが。
本当は、さまざまなところから女人禁制廃止の押しや投げがありながら、そこは相撲協会です、受けて立つのはお手の物、持ち前の横綱相撲のふんばりでビクともしないのかもしれません。おこがましいのですが、相撲を愛するひとりとして物言いがあります。
千秋楽の優勝旗授与で音楽隊により演奏されるBGM、以前はありませんでした。国歌斉唱の生伴奏の続きで入りやすいのでしょうが、仮にも国技を名乗るであれば、洋楽ではなく、日本の伝統に則(のっと)った和風の曲調とパフォーマンスが欲しいところです。皆さんはいかが……。
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