塩 ひ と つ ま み

■夫婦別姓 

●夫婦別姓を巡る論争が喧(かまびす)しいです。女性の社会進出が活発になっても、なぜ女性側だけが結婚で夫の姓に変更しなければならないのか、そうした疑問と不満、そして旧姓のままで活動したいという欲求が湧き上がるのは当然です。

私は仕事上、旧姓の「野口」を名乗っています。「野口料理学園」を母から受け継いだ手前、ずっと野口姓を通してきました。そうかと言って、野口姓を守らなければならないとか、別姓を維持したいなど特段の意識はありません。成り行きというか、その方が便利だったからです。それが、JICAシニアボランティアに応募するにあたり、野口姓を引っ込めて常に戸籍上の姓=本名を使わなければならなくなりました。これにも取り立てて反感や抵抗感はありません。書類上の手続きと割り切っています。

●女性は結婚して相手方の姓を名乗るのは制度上の義務とされてきました。男性だって、妻かたの家に婿(むこ)に入ろうとすれば、女性と同じように妻の姓に変え、それに伴うもろもろの名義変更の手続きが待っています。
ただ、男性にはもうひとつの選択肢があります。言うところの「マスオさん方式」(サザエさんの漫画から)です。名前は変える必要はありません。磯野サザエさんのほうはマスオさんの姓・フグ田に変えているので夫婦別姓ではありませんが、当時、夫が妻側の家族と一緒に住むのは珍しかったのだと思います。「マスオさん方式」のことばが生まれた所以です。

私の場合も、主人はマスオさんです。でも私はサザエさんのような専業主婦ではありません。そのまま野口姓を名乗って母をサポート、副園長として仕事をしていました。ですから、さしずめ変形もしくは擬製の夫婦別姓。今風に言うなら「ナンチャッテ夫婦別姓」です。

●正直なところ、私の中では野口も小笠原も、字面が違うというだけでそれ以外の意味はありません。通り名と本名、仕事上の名前と戸籍上の名前、言ってみれば頭の上の帽子を変えるか、カツラをつけるかの感覚の違いで、私自身の実体(個性やキャラクター)は変わりようがないからです。

ところが下の名前(純子)が変わったり、小笠原や野口が消えてしまうと穏やかでいられなくなります。妙なもので、人格まで違ってきそうな気がします。つまり本来の自分が実名でない名前に隠れて、別の人間に取って代わりそうに思われてしまうのです。偽名、匿名、芸名、ペンネーム、あだ名、仮名、源氏名など、それら変名によって、時として、自分の中にある隠れた能力や才能が思いがけず引き出されるという想定外のことが起こりそうです。錯覚とは言い切れない何かです。うれしい誤算と言っていいでしょう。

ところが良い面ばかりとは限りません。匿名や偽名を使って人を騙したり脅したり中傷したり、通常では考えられない悪魔的な所業に突っ走ってしまうキケンもありそうで、怖いです。たかが変名、されど変名。得体のしれない、とんでもないパワーが変名には潜んでいそうです。

●話が逸れました。
選択的夫婦別姓制度の導入をいま国会で審議中です。結婚で名字を変えていいし変えなくてもいい、自由に選べるという法律です。与党は渋っています。理由は、これだと子供を含めて家庭内で異なる名字が同居することになり家庭崩壊につながる可能性がある、のだとか。異なる名字が家庭不和の一因に成り得るとは、いささか思い過ごしの感はありますが。
とまれ、法案が通って、少なくとも私のような「ナンチャッテ夫婦別姓」のレッテルを、きれいさっぱり剥がしてもらいたいところです。

私は名字にこだわりはありません。言ってみれば、「日本」をニッポンとするかニホンとするか、その程度の関心度です。ニッポンと呼んで(読んで)でもニホンでも構わない。一方だけを正解とし、他方は誤用だから排除禁止するのではなく、両方ともに許容したらいい。名字においても、男女の機会均等に照らして、女性の社会進出を後押ししてくれるような選択的夫婦別姓制度に期待したいです。

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【野口料理学園】

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