塩 ひ と つ ま み

■「競う」から「集(つど)う」に 

●日曜日、「地区町民大運動会」(第71回)に参加してきました。6年ぶりです。「大運動会」と銘打つほど、年に一度、15町内が一堂に会する地区最大のイベントです。いえ、「~でした」。今も100人以上は集まる大きなイベントですが、9町内に減り、かつての賑わいは穴のあいた風船のようにしぼんでしまいました。

最盛期の昭和30年代、当日ともなると、老いも若きもお弁当やおやつの風呂敷包みをたくさん抱え、勇んで小学校の校庭をめざしました。集合の段階から熱がこもり気合が入っていました。ビニールシートなんて洒落たものはありません。ゴザです。それをグランドの周りに自治会ごとに振り分けられた場所に敷きます。そこも場所取り競争です。陣地に入りきれないほど大勢の人が集まるからです。

優勝旗をわが町に!を目標に、競技者は各種目に熱戦を繰り広げます。応援団もアルコールが入ってしだいに熱を帯び、対抗意識むきだしです。それが最高潮に達するのは、何といっても運動会の華・リレー競技。オリンピックに引けを取らないほどのすさまじい歓声と熱気が入り混じって広い会場が沸騰したものです。子供の数が滅法多かったのと、めぼしい娯楽が極端に少なかった時代でした。

●あの時と比べると見る影もありません。運動会は「競う」から「集(つど)う」に、「応援」もただの「見物」に変わりました。少子高齢化は時代の趨勢(すうせい)です。大会の主役の座が若者から高年者に移りました。見渡すと、逆に子供が目立つほどです。それも、町外や県外からやってきたお孫さんたちです。

プログラムを見ても一目瞭然。種目といえば、輪投げ・玉入れ・ボーリングシャトル・ホールインワンetc. で、走る競技はゼロ。唯一、パン食い競争はあります。でも走ることは走りますが、速さを競うものではありません。ヘタに真剣に走りでもされたら、止められてしまいます。怪我でもしたら大変ですから。リレーと並んで運動会の花形である綱引きも外されました。同じ理由で、激しい運動は禁物です。危なっかしくて見ちゃいられないのでしょう。

参加者の年齢が上がり、大会の規模が縮小するにつれて、背景に流れる音楽も変化しました。以前なら運動したく(走りたく)なるようなアップテンポの、たとえば軍艦マーチだったり、フレンチカンカンのダンスミュージックなどが主でした。総じて今は、当たり障りのないオトナシメな音楽に変わっています。

●なくなったのは走競争や綱引きだけではありません。手作りのお弁当もほとんど見かけなくなりました。なかには、手製の漬物や煮物を用意しておすそ分けするお年寄りもいますが、ごくごく少数で、ほとんどはコンビニか弁当屋さんで買ったもののようです。寂しい限りです。かつては朝早く起きて手作りしたお弁当を各自持参した上に、町内ごとにお肉を焼いたりおでんを煮たり、またそれを自慢げに他の町内にふるまったりして、そこでも競っていました。

運動会は天候に左右されます。例年なら5月は薫風が肌に気持ちの良い爽やかな季節です。だから雨の心配をするだけでよかったのですが、近ごろは温暖化の影響で気温が上昇し、熱中症が加わりました。高齢者に高温は大敵、命に関わります。午前中で早々に切り上げることもあります。今回は曇りがちだったこともあり、真夏日にはならないとの予想から、スケジュールを端折(はしょ)ることもなく午後の1時まで余裕をもって進めることができました。

この先もこのように運動会は社会の変化とともに変わっていくでしょう。外国人が急増している現下、彼らが参加する運動会が当たり前の風景になる時代は、すぐそこです。いったいどんな形の運動会になっていくんでしょう?

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【野口料理学園】

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