塩 ひ と つ ま み

■もしかしたら 

●深夜、庭でドーンと大きな物音がしました。何だろうと、懐中電灯を照らして見ました。泥棒でも野良猫でもなさそうです。丹念に見たつもりでしたが、変わったことや怪しいものは見つかりません。翌朝もう一度確認しました。なんと、ザクロの木が大きく左に傾いて(45度はありそうです)、ハナミズキの木に寄りかかっているではありませんか。

風が強かったわけではありません。雨も降っていませんでした。ということは、老衰? 老木と言えば老木です。樹齢は推定100年以上、戦前からありました。高さ8メートル弱、根回り80センチ。この木の平均値がわからないので、wikipedia で調べました。

●ザクロは「寿命は200年ほど、高さは5 – 12メートルになる」とあります。ということは、うちのは老木には当たらないようです。今年は生り年で、例年になく赤い花をいっぱいつけて感心していたところでしたから、老木でないことを立証しています。それどころか100歳としても人生半ば、まだまだ成長過程あったといえそうです。見た目で判断してはいけなかったですね。

いつ頃植えたのかはっきりしません。祖父の時代か曾祖父の時代か。わかっているのは、空襲で真っ黒こげにやせ細ったにもかかわらず、再び芽を吹き出し、ある程度成長してから、父が場所を移して植え替えました。おなじように南方の戦地をくぐり抜けて帰還した兵隊さんです。その時の父の胸に去来したものは何なのか、私など計り知れません。

●そのザクロが戦後80年経って倒れたのはなぜ? 想像するほかないですが、植え替える時に斜めに植えたか、あるいは途中何らかの理由で傾いたまま伸びてしまい、上部に枝がたくさん張って頭でっかちとなり、さらに傾斜がすすんでついに重みに耐えかねた。そんなところでしょうか。

ご存じのように、ザクロはお釈迦様が、子供の肉を食べる鬼子母神に与えて子供を食べないように約束させたといういわれがあります。我が家でも観賞用ではなく、食用として食べていました。実が付きだすと、ヒヨドリなどがついばみにくる「野鳥を呼ぶ木」として私も大好きです。

このまま放っておくわけにはいきません。別棟の倉庫につながる電線にも引っかかっていて危険です。何としても真ん中で伐ってもらわなければなりませんが、なにしろ太針のようなトゲがいたるところで牙をむいています。バラのトゲも厄介ですが、ザクロも負けていません。生傷は覚悟しなくてはならないでしょう。

●配偶者に頼むことにしました。野良仕事が好きな山男です。それも、植物を植え育てるより、伐採するほうを好むという一風変わった嗜好の持ち主。チェンソーを使えば手早く済みそうでしたが、あいにくとご近所に持っている人がおらず、友人の農家さんにもなかったことから、自前のノコギリの手作業で挑みました。悪戦苦闘の末、やっとのことで上部半分を真っ二つに伐り落としました。太い幹はそのまま放置、小枝や葉っぱはナタで払い、2日がかりでかき集めて、45リットルゴミ袋9個に収めてくれました。

残り半分の下部は傾いたままですが、無理やり引っこ抜いたり押し倒すには忍びなく、脚立をあてがって朽ちるにまかせることにしました。幸い根っこ部分が完全に地表に露出していないので、もしかしたら再生する可能性があります。戦火に耐えた奇跡の生命力に期待したいです。父も草葉の陰から応援してくれるかもしれません。

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【野口料理学園】

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