| 塩 ひ と つ ま み |
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■王様●何の気なしにつけたテレビの画面に目が行きました。本当に偶々(たまたま)です。それは日本陸上選手権、女子500m決勝の結果順位表でした。1位の田中希実さんから8人全員、「○子さん」(「○○子さん」)はいないのです。えー、今どきの女の子は「子」がつかないんだ、と妙に感心しました。
私の気まぐれな好奇心を刺激したようで、試しに、9位以下~26位の順位表をネットで確かめました。○子さんは一人のみ。ついでに100mハードルの出場者リストです。34名中これも一人だけ。走り高跳びはどうか。出場予定者41名で0名。三段跳びはというと、24名の中に2名いました。円盤投げでは19人中ゼロ。砲丸投げも18人中ゼロ……圧倒的です。○子さんは、文字通り数えるほどしかいませんでした。今更ながらですが、ものの見事に、近ごろの女子名の傾向性を知らされたのでした。
若い世代からは、そんなの当たり前でしょ、と一笑に付されるでしょうけど、バーバ世代はいささかびっくりです。私たちの周りは逆に○子さんだらけで、「子なし」はそれこそ数えるほどに珍しかったのですから。
●どうしてこうなったのでしょう。
やはりマンガ・アニメの影響が大きいと思われます(アニメの前に漫画が先行)。作者というのは主人公にはなるべく普通とは変わった特別の名前を付けたがるものです。中でも、お目々パッチリでかわいらしい女の子は、通り一遍の名前より突飛な名前で際立った方が読者にアピール、好まれます。現実的ではないと分かっても、読者のみなさんは漫画の世界なのだからと暗黙の了解で受け入れます。もともとが子どもたちの中では、漫画と現実、フィクションとノンフィクション、日常と非日常の世界の垣根は低いのです。テレビが出現します。またたく間に普及し通信手段が飛躍的に進化発展、おびただしい量の情報が飛び交うようになります。次いでアニメも登場し、テレビと同一軌道をたどります。絵と違って映像は音が入り、動きがあって立体的で迫力満点です。当初はディズニーの独壇場でした。私たちはディズニーアニメを見て育った世代、ですから出てくる人物は英語名です。
やがて世代を経て、映像技術がディズニーに引けを取らない日本製のアニメが作られるようになります。作風もアメリカを離れて独自化していきます。単純な子供向けから、大人の鑑賞にも耐え得るような題材やストーリー性をもたせて深化します。といっても、日本風どっぷりではなく、どこかバタ臭くて近未来のものが多い印象で、その辺の機微が何とも言えず絶妙で上手なのです。国外の子どもたちにも受け入れられるわけです(漫画もマンガになりました)。
登場する女の子の名前は、○子ちゃんと、明らかに日本人と分かるより、子なしのほうがインターナショナルで親しみやすく馴染みやすい。たとえば、「えり子ちゃん」より「えりちゃん」「エリカちゃん」のほうが、若い人にはあか抜けてカワイイ、オシャレに映るのかもしれません。
このような環境で育った子供が親となって娘さんに名を付けるにあたり、考えるでしょう。国際化の今だから、海外でも違和感のない名前にしたい。○子だとなんか男っぽくてイヤ、子なしのほうがカッコいいわと。今や人の名前は一部に規制はあるものの、性別、国別、民族別などの枠が取り払われ、自由に付けられるようになりました。隔世の感です。
●ここまで独断と偏見に基づいた私流の解釈ですが、白状しますと、私も自分の娘に名前をつけるのに、あっさり時流に乗っかったくちです、子なしでいこうと。
理由は他にもあります。戸籍上、私は「小笠原」姓です。字数が多いので、「子」は省きました。それにマダム・キュリーに憧れていましたから、放射線に因んでRAYとしました。これに「麗」の漢字を当てました。「小笠原」は画数が少なく軽いと思い、「麗」を置くことで座りを良くしたつもりです。思惑と期待はまんまと外れました。
まず、娘の頭脳は理系ではなく文系でした。もうひとつ……
私は4年間ブラジルで暮らしましたが、「麗」(アルファベット表記はREI)はポルトガル語で「王様」の意味です。これでは○子より、よほど印象が悪い。が、後の祭りです。とんだオチが付きました。子供は親の思い通りにはならない、という古くからの戒めをしみじみ感じています。
【野口料理学園】
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