| 塩 ひ と つ ま み |
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■定説●先日のニュースでした。今年のサンマは極端に不漁で、1尾5万円!ウッソー? 大衆魚の代表がこの値段、誰もが驚きました。しかし、受け入れざるを得ない現実であることはみんな承知しています。セリで決まった価格(相場)だからです。そのうち変わります。さらに上がるか、安くなるかは状況次第。つまり需給のバランスで相場は動く。ということは、相場とはたまたまその時の値段、すなわち「その場の値段」です。
「~と相場が決まっている」という表現があります。"夏は暑い「と相場が決まっている」 ″などと使います。「」内の意味は、一般的にそう言われている・思われている、です。そうすると、本来の「相場」の意味と少し違います。「動く」つまり「変動する」の意味が抜け落ちています。
そこで、「世間一般で言われている・思われている」に「変動」の意をプラスしたことばとして、「通説」がしっくりきそうですが、いかがですか? 一応認められた説ではあるけれど、変わり得ることを前提にしていますよ、ということで。「俗説」もありますが、通説に比べて信ぴょう性に欠ける嫌いがあります。ほかにも、根拠の薄い「風説」、無責任な「噂」、そして有害な「デマ」……といろいろです。●食の世界にも、通説はもちろんあります。経験則が主流の業界ですから、通説だらけといっていいほどたくさん。その中に私も長く身を置いてきました。二つほど体験を記しましょう。
まず古いところから。母から聞いた話です。
ほうれん草は、熱湯で茹でた後、ザルにとって水で洗い、急激に冷やします。尿路結石のもととされるシュウ酸を取り除くためです。こうすると色も鮮やかです。ところが、戦前や戦後まもなくまでは、茹でたらザルに広げてウチワであおいでいたそうです。水洗いすると、栄養分が流れしまうからと。シュウ酸が、水で洗わないと残って結石の原因になるという知識がなかったのです。つぎに、ゴボウのせん切りのアク取りです。
私が駆け出しだったころは、せん切りのゴボウを酢の入った水に入れて1度かき混ぜ、ザルにあげてアクを取りました。今は酢なしの水だけでOKです。栄養学の分析がすすんだ結果、酢は必要なしとされています。
2年前、ブラジルに行った折です。ゴボウのせん切りのアク取りのとき、「先生、なんで酢を入れないの?」と高齢の女性に質問されました。彼女の持っていた知識は1960年前後にブラジルへ渡った当時のままで、その後更新されていなかったのです。2例とも通説(それまでの習慣)を、科学の力で変えることができました。科学のメスが入ることで通説(習慣)が是正され、より確実性が高くなって「定説」に昇格します。そして一旦定説になると、科学的な立証に基づいているので、通説と違って動きません。また簡単に動いてもらっては困ります。でも、これすら変わることもあります、稀にですが。俗にいう、「常識が変わる」です。その場合は「覆(くつがえ)る」すなわち、「ひっくり返る」です。ただ事ではないからです。なので、旧定説がひっくり返り、新定説が取って代わって定着するには時間がかかります。
●そんな例に出くわしました。
テレビのモーニングショー(7月18日)です。糖尿病の専門医のことばに引き込まれました。「油は健康に悪い」「油は太る」を覆す主張です。糖質の方が健康に悪い。脂質はとても体に良い。肉や油分はできるだけ積極的にとるようにと、従来の定説を真っ向から否定するのです。2009年アメリカの論文を発祥とするようですが、この日本人医師は10年以上にわたって論文や著作を発表していて、十分な時間が経過しています。もしかしたら、これが新しい定説になるかもしれません。私は寡聞にして存じ上げませんでした。定説の反転、価値や常識の転換…世の中の変革を見落とすことなく、またそれらと謙虚に向き合うよう心がけたいという思いを再認識いたしました。
【野口料理学園】
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