| 塩 ひ と つ ま み |
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一人芝居●ブラジルから戻って1年が経ちます。ほとんど元の生活に戻っていますが、そうでないものがひとつ。車の運転です。帰国後、まだ一度もしていません。あと少し、我慢しようと思っています。経緯があって、ちょっぴりへそを曲げているのです。
JICAボランティアは、赴任地での車の運転は禁止です。任期中に、私の免許証が更新の期限を迎えることは、あらかじめ知っていました。JICAの話では、2年後帰還した時点でパスポートと、必要ならJICA発行の就労証明書を添えて警察または免許センターに持参し、国外滞在を立証すればスンナリ更新できますということでした。
その通りにしました。ところがです……。
「2年間日本を離れていたので、免許は失効です。講習と実地試験を受けてください」
耳を疑いました。
免許センターの説明はこうです。
「海外に長期滞在する場合、滞在中に免許証の期限が来ると分かっていたら、渡航前に事前に更新することが可能です」
「期限前であってもいいんですか?」
「そうです」
そんな話、聞いてません!
言い訳が通るわけはありません。自動車学校に予約を入れ、筆記試験は免除でしたが、いくつかの高齢者講習のほか改めて実地試験を受けざるを得ませんでした。もちろん実費です。こうしてようやく再交付されたのが去年の12月初め。ただし、初心者マークを付けなければならないというのです。私が免許を取ったのは大学生の頃、半世紀以上も前です。それがここへきて、この年齢で初心者扱いとは。ここでも耳を疑いました。事故を起こしたわけではありません。ボランティア活動をした挙句にこの仕打ち、それはないでしょ。もう、ことばになりません。
●ご存じのように、初心者マークのステッカーは1年間貼付義務です。しかも、70歳以上ですから、高齢者マークも。つまり、若葉マークと枯れ葉マーク、両方のステッカーを1台の車に一緒に付けるということです(後者は任意ですが)。しかも目立つところに。そんな車、私の長い運転歴の中でも見たことありません。それを私が貼って走る。気恥ずかしいもいいとこです。だったらいっそのこと、実年齢の数字を並べて貼って驚かせてやろうかしらとも思いましたが、それはやめました。
でもさらに、これにとどめを刺すような事実が明らかに。初心者ですから、当然、ゴールド免許は消滅しました。これまでの優良運転者の実績はパーッ。……泣きっ面にハチの心境です。始めから知っていたらと思うと、苦々しい気持ちでいっぱいです。そこで、ささやかな抵抗を試みることにしました、初心者マークの1年間は運転するものかと。今もその誓いをかたくなに守っています。それも、あと少しで明けます。かくかくしかじか、ことの顛末(てんまつ)は以上です。
●パスポートの提示で更新は簡単。これは私の思い違いだったかもしれません。あるいは途中、交通法規が改正された可能性もありますが(時々変更されます)、その辺は質していません。誰に責任があるわけでなく、あるとするなら最終確認を怠った当方にあります。
やがて私の「へそ曲がり期間」は終わります。勝手に自分が自分に課した約束事なので、愚にもつかない目的不詳の一人芝居(相撲)、ただの自己満足です。でも自身への戒めとして、それで良しといたします。
あっ、唯一いいことがありました。
ブラジルでの足(移動手段)は、車に乗せてもらうかタクシーだったので、すっかり足腰が弱っていました。へそを曲げたせいで、材料の買い出しはもっぱら自転車です。でも、これが自主トレとなって、期せずして鍛えられました。「雨降って地固まる」、ですね。
【野口料理学園】
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