塩 ひ と つ ま み

"日本人度" 

●回転寿司、お茶漬け、カラオケ、パチンコ、お好み焼き、温泉。どれを取ってもこれぞ日本(日本人)といったアイテムです。嫌いなものがあったら、「あなた、日本人?」と疑われそうです。でも私にとってはどれもこれも、日頃、縁のないものばかり。私って日本人ではないのかしら?

まず、回転寿司です。一度30年ほど前、娘にせがまれて行きました。ところが生憎と、店が混んでいて諦めました。つまり、これまで入ったことがありません。
お茶漬けは、代々我が家の食習慣にはありません。
カラオケは、専用施設のほか飲み屋さんとかバーなどにもありますから、お眼にはかかりますが、歌ったことはありません。音楽は嫌いではないし、演歌も大好きです。でも聴くだけ。マイクを握って人前で歌おうとは思いません。日本と同様、ブラジルの日系社会もとてもさかんで、現地のカラオケ大会に何度か審査員で呼ばれていました。
パチンコは、友達数人とやってみようかと興味本位で入ったのが確か40年前。これもそれっきりです。

お好み焼き。今でこそカレーライスに並ぶ人気食ですが、以前はどちらかといえば関西以西で全国区とは言えませんでしたので、母は教室のメニューに入れませんでした。私もそれを踏襲してきました。過日、JICAの仕事で中南米日系社会のみなさんにオンラインレッスンをするにあたり、リクエストを募ったところ上位にランクされ、その人気ぶりは今や海外にも浸透しています。それもあって、ブラジルでは何度かレッスンしました。

温泉。これもそうです。主人の田舎(東北)に行くと、決まったように近くの温泉に浸ります。山梨の温泉と違って硫黄臭の強い熱めのお湯はたとえようもなく気持ちがいいものです。といって、わざわざ温泉が目的で主人に帰郷を勧めたことはありません。義父母が亡くなって数十年になります。温泉も長い間ご無沙汰です。

日本的アイテムの極致・日本酒にしてもそうです。大の酒好きで3升はイケタ父の血を引いて、私も相当イケル口という自覚はあります。それでも、付き合いで飲むことはあっても、一人酒をすることはありません。また、飲み会で自分から手酌で注ごうなどとすることもありません。
今の季節の定番・ウナギもです。みなさん、これを食べないと夏を越せないようなこと言いますが、私はほとんど無関心。ただしウナギは好物ですし、夏場意外に付き合いで食べることはあります。

●こうして見てくると、私は日本(日本人)特有の食とか遊び、習慣とつくづく関りが薄いと知らされます。嫌いで突き放したり、拒否しているわけではありません。取り立てて行ってみたいとか、あえてやってみたいとか、無性に食べたい・飲みたいということがないだけなのです。平たく言えば、単に"奥手"ではないかと。

食を仕事としていながら、食べるより作る方がずっと好きです。特にケーキやお菓子類は、辛党だけに、味見だけでして、作ってもほとんど口にしません。スポーツもそうです。プレイするより観るほうがワクワクします。これは理由が分かっています。運動神経が鈍くて上手にできないから、観ることで、しているつもりなのです。

●私には日本独特の季節感や行事意識が欠けているのでしょうか。そうでもないようです。四季、とりわけ気象にはとても興味があり、テレビ画面に天気図がでると思わず目が行ってしまいます。これにも訳があって、実は私が進みたかったのは地球物理学。ゆくゆくは気象庁に入って気象技官になりたかった。でも当時、女性には門戸が開放されていない時代でした。気象好きはその名残りです。今でも夢を見ることがあります。南極の越冬隊員として気象観測をしながら、ときどき料理作りを手伝っている姿を。

行事意識では、仕事とは別に、家族のために正月のおせち料理を作れば、七草がゆも忘れずに用意します。雛祭りにはちらし寿司を、春分の日にぼた餅、お盆には安倍川餅、秋分の日のお萩、十五夜さんの月見団子などなど、最低限のしきたりは守っているつもりです。

ついては、私の中の日本的アイテムの希薄さは、"日本人度"の濃淡というより、個人的な趣味趣向の違いの範囲内ではないか、こう都合よく解釈しています。

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【野口料理学園】

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